EKAKINOKI

イタリアで葬送行進を見たら・・

葬送行進曲通夜、告別式・・葬儀の点と点をつないでいるのが、日本の場合、交通手段としての霊きゅう車。それはツツツッーと、忙しそうに走り抜けていきます。ところがイタリアでは、点と点をつなぐ線の部分、つまり葬送行進も、またひじょうに重要な部分のようにおもいます。

たくさんのひとが、棺をかこんでゆるり、ゆるり、バンドが演奏する葬送行進曲にともなわれて行進していく光景を、イタリアではときおり見かけます。葬送行進曲というのも、『死』をアブストラクトに表現するために作られたのではなく、そもそもはこの葬送行進のためのものでした。

「こういう行列に出食わしたイタリアの人々は、みずからに不幸が襲いかかるのを嫌って、『鉄にふれる』とか、あるいは『男は股間にふれる』なんて風習があるみたいですが、ホント?」と、あるとき問いかけられました。

『なにか不吉なことがあると鉄にふれる』というのはイタリアだけではなくて、ヨーロッパにはよくある風習・・でも『男が股間にふれる』というのは、どうなのでしょう?なにかほんとうにありそうな気もします。けっこう映画なんかでそういうシーンがコミカルに映されていたりするのかもしれませんね。いままでは、その意味を知らなかったから見逃していただけかも・・

それでちょっと調べているうちに、葬式についてのおもしろいファイルを、あるシチリアのホームページで見つけました。シチリアは独特の文化を有しているので、これがイタリア、というのとはちょっとチガイますが、かえって昔の風習が残ってるみたいなところはあるとおもいます。

だれかが死ぬと、故人の霊が家にとどまらないように窓という窓を開け放つ。昔は屋根までとっ払ったそうです。 / 亡骸の足は、かならず出口に向ける。ここからぎゃくに、足を出口に向けて寝るのはタブー。 / 亡骸を家から運び出すとき、家じゅうの窓も扉も閉めて、故人が家に帰ってきたがらないようにする。

葬送行進曲亡骸(なきがら)には、故人が生前愛用していたものを、タバコにいたるまで身にまとわせてあげるのですね。そのへんまでは分からないことはありませんが、ポケットにコインを入れてあげるのだそうです。これ、三途の川(←イタリアにはないとおもうけど)を渡るため!

女たちはハンカチを鼻にあてて慟哭し、故人に抱きつき・・これもだいたいパターンが決まっているみたいなのですが、読んでてハッと目を疑ったのは「女性は胸をはだけ、あるときは乳房が見えるぐらいに・・」とあるのです。んんっ、なんのため?

「しかし昔は、魂はやがて戻ってきて皆の守護神になるという、共通の認識に共同体が支えらえていたので、今ほど『死』というものが『どうにもならない否定的なもの』ではなかった。」そんなことも書かれていました。

『鉄と股間』についてですが、このファイルには『鉄と角(動物のツノ)』とありました。これがちょっと厄介・・と言うのも、『角』はイタリア語でコルノと言い、つまりその、『突起物』で、よく卑猥な意味で使われたりします。

『角をする』で『夫を裏切る』ですし、ひとさし指と小指だけ出してあとの指は閉じたまま相手に向けるのは悪魔払い、転じて、ユーモアまじりに「これでもくらえ」的に、ふだんでもよく使うジェスチャーのひとつ。

『角』と言ったっていまの時代、そこらへんにころがってるもんでもないし、たぶん『突起物あるいは角のようなもの』という解釈で、それに相応するものを触るんじゃないかな。自転車のハンドルなんかもたぶんソレ・・。

『股間』は、こういうふうに考えてくると、そこからの派生ですね。でも、「なぜ鉄で角なのか」については、イタリア人自身にもたぶんわからないでしょう。『悪魔払い』にはちがいないけど。

イタリア・トスカーナ地方(フィレンツェがあるあたりの中部イタリア)出身のピエリーノ(男性)によると、「葬式を見たとき、たまに鉄にさわったりするかなぁ。でもなぜかは分からない・・。」とメールしてきました。

トスカーナ地方のニンゲンが言うのですから、おそらく・・いまイタリアでは概してそんなふうなんだろうとおもいます。(近代産業が集中している北イタリアは相対的にいま風、それに対して南イタリアは固有の伝統をより濃厚に残している部分があり、トスカーナ地方だってじっさいにはかなり伝統的なんですが、でも、中間ぐらいと考えてもいいのではないかとおもうのです。)

さらに『鉄にさわって不吉さをのがす』という慣習が健在だということはたしかに言えても、『男は股間にふれる』という部分は、あるいはもうスタレタか、比較的南イタリアの慣習ではないのかな?

もうひとつのメールはアンナから。アンナは、南も南、かなり石頭が多いプーリア地方出身でいまは北イタリア在住の女性・・でもバンバンの国際派。彼女のメールはムチャおもしろかったので、そのまま訳します。

(1) 悪魔払い。死を追い払うため。だけど、そういうのって、田舎っぺがすることよ。それにしたって、20年前ほどじゃないわ。角(突起物)にさわるのも、幸運をもたらすとか、長生きできるとか。赤いのだったらもっといいとか言われてるわ。地中海地方の習慣よ、ナポリ以南の、とりわけ、ナ、ポ、リ、!

(2) 鉄にふれるのも幸運を呼ぶから。馬の蹄鉄にさわればもっとついてる、って言われる。股間にさわるかどうか、そういう機会(葬送行進)に、街頭で男のひとたちがなにをしてるか、あまり注意して見てないからよく分からないわ。わたしが見るのは、わたしが関心がある男が、わたしのベッドで裸になるときだけ。

階段の下には立たないこと、不幸を呼ぶわ!

(訳おわり)

(2003.08.25.)

※ ファイル中の画像:(上)ビアストラテン(Beerstraten, Jan Abrahamsz 1622-66)作『ニウクプ村のこどもの葬式(Museum of Fine Arts, Budapest)−部分』(下)クールベ(Courbet, Gustave)作『オルナンの埋葬(1849-50年/Musee d'Orsay, Paris)−部分』

※ 参考にしたシチリアのHPファイル(イタ語)(Galleria Roma)
http://www.galleriaroma.it/Di pietro/Pachino il paese..

かんれんファイル

■ ヴェルディの葬送行進にふれているファイル

BBSより

ミンチカさん

男性はFeを探すのもめんどうなので、手近のAuで済ませてるのかと思いました。(原子記号をお忘れの方は検索してください。)

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