Artemisia Gentileschi 1593-1652 (?) Roma-Napoli
オラツィオ・ジェンティレスキ(Orazio Gentileschi 1563-1639)はカラヴァッジョに影響を受けた画家のひとりとされています。その作品はとても魅力的ですが、カラヴァッジョ作品に見られるような「ひとを挑発するドラマ性』はありません。上流階級が集う劇場で芝居を観ているような「品」をオラツィオ作品はつねにうしなうことがない。だから逆に、カラヴァッジョなどとくらべるとローカルかもしれない。
オラツィオ・ジェンティレスキ作品
http://www.wga.hu/frames-e.html?/html/g/gent..
アルテミジア・ジェンティレスキは、このオラツィオ・ジェンティレスキの娘としてローマで生まれました。
アルテミジアが19才の時、父親は遠近画法を学ばせようとして、風景画家でクロード・ロランの師匠でもあったアゴスティーノ・タッシをアルテミジアの先生にしました。タッシは機を逃さずアルテミジアを手篭めにします。「強姦した」・・ということになり、裁判沙汰になりました。アルテミジアの伝記はここからはじまります。
アルテミジアは、拷問道具で指を締め付けられながら(本当のことを言わせるために)、法廷で証言をしました。「ふたりのあいだに愛はあったか??」・・ってなことが今にいたるまでいろいろに書かれ、映画にもなっています。
ふつうに考えると、タッシは結婚をエサに男と女の関係をアルテミジアに迫った。(それも一回や二回ではなく・・。)でも結婚しなかった。(子供はできた!)『女性の貞操』が最重要課題であった当時、これは一大事です。
ところが、タッシは無罪放免になりました。このときの法廷証言は今でも残っています。(タッシはその後、アルテミジアの妹にも手を出して数ヶ月間服役しています。)
アルテミジアの名誉を救ったのはジェンティレスキ家の親しい友人であったフィレンツェの画家(Pietro Antonio di Vincenzo Stiattesi)でした。アルテミジアはこの画家と結婚すると(といっても数年で別れてしまうのですが・・)、すぐにフィレンツェへと旅立ちます。
フィレンツェではミケランジェロの子孫やメディチ家のコジモ1世の庇護を受け、画家としての地歩を固めました。そののちジェノヴァ、ローマ、ナポリで活躍しています。
1638年には、レイプ事件以来わだかまりを解くことができなかった父親オラッツィオとも和解して一緒にロンドンで仕事をしています。(オラッツィオ・ジェンティレスキは1639年に逝去。アルテミジアは1642年にロンドンからナポリに戻りました。)
アルテミジア・ジェンティレスキ作品
http://www.wga.hu/frames-e.html?/html/g/ge..
ところで、彼女自身の心の中ではどのように『あの事件』が処理されていたのでしょう?
レイプされて証言台に立ち、シングル・マザーをやって、キャリア・ウーマンで、だからフェミニストのシンボル・・・というのは現代人の目から見たアルテミジア像。
またタッシに心を傷つけられ、そのトラウマ(心の深い傷)のために、生涯絵の背景は描かかなかった(弟子に描かせた)などというのもなんとなく誇張ではないかとうたぐりたくもなります。
傷ついて立ち直れないような「辱めを受けた」と感じていたのであれば、まっとうな芸術家としての人生は送れなかったでしょう。
そもそも、因習が根を深く張っていたあの時代に裁判で証言台に立ったぐらいの女性です。タッシとのことがこれだけ騒がれたということも、そしてそののち、100%男社会の時代にどこへいっても画家として評価されたというのにも、才能があったという以上に、ある種彼女独特の立ち居を感じないわけにはいきません。
繊細さを欠いても強引に望みをかなえてしまうようなそんなタイプだったとはおもいませんが、心理的な駆け引きはじょうずだったのかもしれない。「女」という部分をうまく利用できるしたたかさがあったのかもしれません。
アルテミジア・ジェンティレスキ作とされる34作品のなかには、ユディトを描いた一連の作品があります。ユディトは、寝返ったふりをして敵将の首をはねた女性です(旧約聖書)。 スゴミはある。これをアルテミジアのユディトに対する共感ととるか、、
(2001.10.07 点検)(2002.09.03. 見直し)(2003.01.09. 書き改め)
※ ファイル中の画像: (上) 『自画像』/1630年代/Royal Collection, Windsor (下) 『ユディトと召使い』/1612-1613/Galleria Palatina (Palazzo Pitti), Florence
※ 上(拡大画像つき)の本は、『アルテミジアの情熱(La passione di Artemisia / Susan Vreeland / Neri Pozza Editore / 2003)』。
■ ジェンティレスキ父娘展
「ジェンティレスキ父娘展」というのはたしかに珍しい・・・Museo di Palazzo Venezia, Via del Pleibiscito,
118 - Roma, -2002.01.20.
■ クロード・ロラン
■ カラヴァッジョ
■ 女性たちの筆あと
■ Salon.com
「アルテミジア」(1998年 フランス映画 アニェ・メルレ監督 ヴァレンティーナ チェルヴィ主演) がアメリカで上映されたときの批評。(英語)
■ アルテミジア・ジェンティレスキについてのサイト(英語)