Niki de Saint-Phalle 1930-2002
ニキ・ド・サンファルに興味をもったきっかけは、ニキがイタリア・トスカーナに20年ほどの歳月をかけて作った『タロット・ガーデン』だった。
タロット・ガーデン
http://www.nikidesaintphalle.com/
『タロット・ガーデン』のことを知ったときまず思い浮かべたのは、おなじトスカーナに1500年代に作られた『モンスター・パーク(※)』 − 『タロット・ガーデン』と『モンスター・パーク』は場所も近いし、作られた時代の差こそあれ、森のなかに巨大な彫像が点在している愉快さがどこか似通っている。
ところがニキを『タロット・ガーデン』制作へと導いたのは、南仏オートリーヴにあるフシギな城と、スペイン・バルセロナにあるアントニオ・ガウディ(1852-1926)の『グエル公園』だった。
Le Palais Ideal du Facteur Cheval
郵便配達夫ファクトゥール・シュヴァル(1836-1924)が33年の歳月をかけて作ったフシギな宮殿。
http://jacquesmottier.online.fr/pages/palaisideal.html
グエル公園はじめバルセロナの写真
http://www.dourish.com/photos/albums/barcelona/
『タロット・ガーデン』はいずれおとずれるとして、一度ニキ・ド・サンファル作品の素材感を確かめてみたいとおもっていた。ニキ作品は、現在那須のニキ美術館で見ることができる。
ニキ・ド・サンファルはファッション・モデルからアーティストに転身。1960年代には、オブジェを射撃してそこからペンキがドロドロと流れ出すような『パーフォーマンス+作品』をやっていた。そのときのニキの姿をとらえた3点ほどの白黒写真が壁にかけられていた。
じぶんの憤怒に理屈を見い出そうと懸命になっているのか・・自分自身と周囲に、それが憤怒であることを一生懸命説得しようとしているのか・・細身のニキが銃をもっている姿はピリピリとしていてとても神経質そうにみえる。そういうニキの姿に、どこにでもいそうなフランス娘の姿が重なる。(ニキはフランスで生まれ、9才のときからアメリカ、1950年代はじめふたたびフランスへ。)
じぶんの中の、そして社会の、すべてのワケが分からないものをぶっちゃけてしまえ、ムリしてでも叩き壊しちゃえ、叩き壊せばなにかから解放されるかもしれない・・。
この『射撃絵画』という時期は、幾歳月にもわたって泉の上を覆い尽くしていた落ち葉を取り除いたかのような、そんな意味がアーティスト・ニキにとってあったのではないだろうか。
落ち葉が取り除かれると、そこからは『喜び』という清水がじわりじわりと地表にしみ出てきた。それはやがて、古代彫刻をおもわせるようなデカ尻やデカ唇をもった鉄とポリエステルの、カラフルでテカテカで巨大な女達の彫像に姿を変えていく。
ニキ作品のあいだを歩いているとなんだかとても愉快な気分になってくる。ユーモラスでなにかを象徴するような巨大オブジェを作るアーティストはほかにもいる。しかしこれほど『美術館という枠』を忘れさせ、くったくなく心を踊らせてくれる作品というのはあまりない。
ありきたりの表現かもしれないが、ニキ作品から溢れ出ているのは『愛=LOVE』なんじゃないか。だからニキの女性像は女神であり、ニキのブッダは神々しい。一万年後の未来古代人がニキのブッダの前にひれ伏していたとしても、ちっともふしぎにはおもわない。
(2003.02.10.)
※ ニキ作品は、こんなところにも!→ ファーレ立川(高島屋裏あたり):JR 立川駅/ベネッセビル下:小田急多摩センター駅/箱根 彫刻の森美術館
※ 横尾忠則さんのニキ寸評(映画『美しい獣(1995年・独)』紹介)がウェブ上にあったのですが、、なくなってしまいました〜。
ニキ美術館
http://www.int-acc.or.jp/niki/
『エジプト・シリーズ(1990年/犬神・鳥神・河馬女神)』は、ニキがローマの美術館でインスピレーションを得て作ったもの。小作品『恋する鳥(1972年)』も印象に残った。『ブッダ(1999年)』は入り口近くにあって、手までは合わせなかったがちゃんと挨拶をして出てきた。
また、ニキの女性像は『ナナ』と名づけられているが、この『ナナ』はフランス語で日常的に使われる言葉で、「今日は野暮用があるから、、」「おんなか?」という場合の『おんな』の意味。
■ ニキ美術館・パンフレット画像