美術館を見る側からの勝手な言いぶん
どのような展示会でも、かならずひとつやふたつはビックリしたりあらたな発見があったりします。そういう機会を与えてくれる美術館には心から感謝をする一方で、もっとこうしたらいいのになぁ、というフラストレーションもとーぜんのことながらあります。
たとえば企画展は、世界じゅうに散らばっている作品をいちどきに見せてくれるのでほんとうにありがたいです。でも、3ヶ月後におなじ作品を見たいとおもっても、もうそこにその作品はありません。(一回こっきりじゃなくて、おもいついたときになんべんでも見たいですよね。いっぺんじゃわかんない、ってのもあるし。)
じゃ『美術館の常設展(=所蔵作品=コレクション)』はどうなのかというと、モネとかルノワールとかコローとか、なにか目玉作品にあたるものが数点あって・・、守備範囲はかなり広くて、しかもその守備範囲がおなじような美術館がたくさんあったりして、結果的に『ちょこっとずついろんなのを見せる』ってかんじの美術館が林立しているようにもおもえるのです。
たとえば公立の美術館は啓蒙的役割りを自負しているので、そういうのは、わからないこともありません。だけど・・美術館の絶対数が少なくて、ひとの移動がいまよりはるかになかった時代ならいざしらず、そこらじゅうで企画展がメジロ押し、どこに行くのも不便がなくて、海外だってひょひょいのひょい、どんな田舎に住んでいてもインターネットでだいたいの情報がつかめちゃう時代に、この『ちょこっとずついろんなのを見せる』が、いったいどのくらい啓蒙的役割りを果たしているのか、ちょっとクエスチョンマーク。
日本の美術館は、欧米の美術館の歴史とくらべてひじょーにあたらしいというのは分かります。では日本の美術館はいったいどこに向かっているのでしょう?どういう美術館を目指しているのでしょう?なんでもアリ、膨大なコレクションの、ルーブルやメトロポリタンですか?(すぐにもそうなってくれるんなら大歓迎だけど・・。)でも、欧米の美術館だって、どうやっていまの時代の大きな変化に対応していくか、模索しているのです。
また、「※※派の絵をおもうぞんぶん見てみたいなぁ」とおもったとき、いったいどの美術館に行けばいいのでしょう?『ちょこっとずついろんなのを見せる』美術館で、ちょこっとだけ見せてもらって、あとは想像力でカバーする?(ナイよりマシですが・・。)また、常設展といってもかならずしもお目当ての作品が展示されているとはかぎらないのです。
※※に関してはめっぽう強い、※※に関しては世界に誇れるぐらい層が厚いコレクションを有している、外国からもそれを目指してたくさんのひとがおとずれる・・・日本の美術館は、なぜそういうのを目指さないのでしょう?そこじゃなきゃ、※※というテーマについてあれだけの作品は拝めないという美術館なら、すっとんで行きます。すくなくとも、どんな遠方にあっても行きたいとおもいます。
そういう美術館にしていくためには、まずもうすこしテーマを絞り込んで、そのテーマに関しては徹底的に突っ込んで欲しいのです。どこにもヒケをとらないぐらいの重厚なコレクションを目指し、その重厚なコレクションからとっかえひっかえ、いつもワクワクするような展示をしてほしいのです。つまり※※というテーマを通して、アートの力強さを、生きているアートを見せつけてほしい、挑発して欲し〜い。
『地元にゆかりがあるアーティスト』というテーマなら、本気で地元のアーティストを発掘し紹介しコレクションし、なぜそのアーティストを評価するのか、そのおもしろさをほかのひとにヴィヴィッドに(ワクワクするぐらいに)伝えていき、海外にその作品を貸し出すぐらいのつもりでやるならおもしろいな、とかおもいます。
多くの美術館が熱いまなざしを注いでいるのが『19世紀後半〜20世紀前半の西洋美術』・・ところがこれ、印象派、象徴派、ナヴィ、表現主義、フォヴ、キュビズム、そのほかそのほか・・すっごいボリュームなのです。ぜんぶをカバーしようなんておもったら、ひとつひとつがおろそかになっちゃう。とりあえずそのうちのどれかに集中するということはできないのでしょうか?
遠方にあるT県立美術館には行かないけど、『プリミティヴ』作品の重厚なコレクションをしているT県立美術館だったら、行きます。(こういうのって、国内で『交換っこ』しただけでずいぶんと集まるんじゃない?)
『現代アート』だって、あれもこれもちょっとづつじゃあ・・。ある程度テーマを絞って集中的に、こんなにおもしろいんだよって、それがわかるような展示の仕方をかんがえていかないと、よほどの知識と感性をもっておぎなえるひとをのぞいては、なにがなんだかよくわからないという場合も多いのです。美術館はトクベツなヒトたちだけが相手じゃないでしょ?
マッケ、ノルデ、キルヒナー、マルクなどなどの『ドイツ表現主義』とか、『フォヴ』とかも、おもしろいテーマですよね。イマジネーションしだいで、テーマなんていくらでもでてくるとおもいます。
時代が変われば美術館のあり方も変わってトーゼンだとおもいますし、教科書的、博物館的な美術館作りの時代はもうおわったような気がします。いままでの学究的、啓蒙的、並べて見せる美術館から、さらにひとをワクワクとさせるような突っ込みが要求される、そんな躍動的、能動的、美術館が求められているのではないでしょうか?
そのためにはまず、世界の美術館とくらべても十分にじぶんのところの独自性に確信をもてるような、そんな、グローバルな視点に立った美術館コレクションのテーマを絞り出し、さらには、なんでそんなにそのテーマがおもしろいのか、突っ込んで突っ込んでいく必要があるようにおもえるのです。
そういう突っ込みは、またコレクションの仕方にもしぜんに反映されていくでしょうし、またそういう努力が積み重ねられて、それがつまり美術館の個性になっていくのではないでしょうか?
(2003.09.11.)
※ ファイル中の画像はルーチョ・フォンタナの彫像(カステッロ・スフォルツェスコ美術館・ミラノ)