EKAKINOKI

瀬木慎一の「西洋美術事件簿」

二玄社 / 2003年

瀬木慎一の「西洋美術事件簿」『事件簿』って言うと、醜聞かな?泥棒さんのおはなしかな?っておもっちゃう。(瀬木慎一氏は真贋カンケーが多いんです。)じっさいは・・「ルネサンスから現代に至るさまざまなアーティストを当時の社会情勢から読み解く」みたいなカンジ。

たとえばレンブラントは金持ちの奥さんをもらってすっげえーいい暮らしをしてたのに晩年スッピンピンになってしまいました。それは・・

奥さんが死んだあと、酒と女に金を湯水のように使ってしまったわけでもなく、レンブラントの作品がすたれて売れなくなってしまったわけでもなく・・「当時、国じたいが経済的に大きく後退したために、かなり手広くやっていたレンブラントはもろにそのあおりを受けた。」ってなぐあい。

ちょいと引用してみます。

 この小国(オランダ ※)の目ざましい躍進も、しかし、わずか半世紀ほどの間のことで、遅れを取ったイギリスが、まず1651年に、航海条例を制定して、オランダ船を追い出した上、三度にわたる戦争を挑む。フランスもまた、コルベール体制のもと、猛烈な攻撃を仕掛けて、1672年には国内にまで侵入する。

 このようなヨーロッパ諸国の熾烈な抗争をたどっていくと、1653年の一人の画家の経済的な変動が、単に個人的なものではないことが、おのずから明白となるだろう。直接的には、一国全体を襲った景気の急激な後退が、宮廷からブルジョアに至る富裕層に及んで、すべての経済投資を揺るがせ、美術品売買を一気に停止状態に陥れたのである。

※ オランダは1601年にスペインから独立。

(引用おわり)

な〜るほど、とおもいました。個人的には、レンブラントの章はおもしろかったし、クールベの章もおもしろかったです。

クールベは、作風そのものはクラシックですが、スピリチュアル(精神的)な部分で、印象派が歴史に登場する起爆剤になったみたいなところが多いにあって、そういうクールベの意味をあらためて感じさせられました。以下、瀬木慎一氏のクールベ観、おもしろい。

一見、その強固で攻撃的な姿勢を見て、「こんな人間は鰐でも喰わないだろう」と当時の批評で排撃されたクールベだったが、けっして硬直的ではなく、自分のなかに爆弾を抱いてはいるが、それを極力抑制できる人間のタイプだったように思われる。

(引用おわり)

それにしても(また冒頭の勘違いに戻りますが)、この本のタイトルの『事件』はナニ?美術史上の事件のコト?それとも社会的な事件?どうして『事件簿』なの・・?タイトルのつけ方に、なにかシックリしないものを感じちゃいました。

(2003.08.25.)

レンブラントかんれんファイル

■ 映画『レンブラントへの贈り物』
■ スカンピンになった社会的事情(本)
■ レンブラントとレンブラント派展

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