ヤン・フェルメール
Jan Vermeer 1632-75
評訳: The Art Newspaper / Martin Bailey
フェルメールの「ハープシコードを弾く女」が再発見された・・・この作品、かつてはバイト・コレクションにあったもので、現在はブリュッセルのロリン男爵所蔵になっている。50年間姿を隠していたこの作品が、メトロポリタン美術館「フェルメールとデルフト派展(〜2001.05.27)」で展示されることになった。
キュレーター(学芸員)リツキは、この作品を「後期フェルメール」の部屋に展示する予定。おそらく、ロンドン・ナショナル・ギャラリーから出展される他の「ハープシコードを弾く女」2点と並んで展示されることになるだろう。
再発見された「ハープシコードを弾く女」が展示されたのは、1907年と1952年の過去二回だけ。この作品の展示が決まったのは、すでに報道関係者に展示会カタログが配付されたあと、1月にはいってからだった。この作品にたいするキュレーター、リツキの基本的見解はつぎの通り・・・
「この作品はフェルメールの時代に属している。」「スタイル、テクニックともにフェルメールのものと酷似している。」「知られているかぎり、フェルメールには工房も追随者もいなかった。」と、なると・・・この作品は、フェルメール本人が描いたか、でなければ、おなじ時期に、おなじスタイルでほかの画家が描いたということになる。
この作品を、ほかのフェルメール作品とともに展示するのはリツキの自信のほどをあらわしているとおもわれるが、いまのところこの作品は「推定フェルメール」という中立的な立場にあり、研究者たちの判断をあおいでいる。フェルメール作品がいまあらためてあらい直される。
フェルメール作品の数は極端に少ない。信ぴょう性が確認されているものがわずか35作品。あらたなフェルメール作品が発見されたとなると、その信ぴょう性を議論するよりなにより、まず興奮する。
また、もしこの作品がほんもののフェルメールだとすると、唯一の個人所有のフェルメール作品ということになる。個人所有のフェルメール作品として最後にオークションにかけられたのは、1921年の「The little street」だ。ロリン男爵にはサザビーズがたらきかけているので、この作品もオークションにかけられる可能性がおおきい。
ハン・フォン・メーヘレン贋作騒動のあと、1948年、専門家のアリ・ドゥ・ヴリは、今回話題になっている「ハープシコードを弾く女」をはっきりと否定している。アリ・ドゥ・ヴリによれば「1800年ごろの作家が昔のオランダ派にならって描いたもの」だった。
アリ・ドゥ・ヴリのこの否定以来、ほとんどの研究者がこの作品に言及しなくなった。1998年、フェルメール国際シンポジウムで、キュレーターのベン・ブルーが核心に迫る発表をするそのときまで、まったく忘れ去られていたのだ。
ロリン男爵が1960年に購入したこの作品は、つい最近、メトロポリタン美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、ロンドン大学の専門家たちによって鑑定された。ロンドン大学絵画鑑定責任者リビー・シェルドンによると・・・
「1700年ごろまでにだけ使用されていた鉛と錫の黄色顔料がこの作品にはみられる。」「非常に高価だったウルトラマリン(紺青色)はフェルメール作品の特徴のひとつだが、これもこの作品にはつかわれている。」「肌色に含まれる緑土色顔料は、ユトレヒト派とフェルメールがつかっていた。」
また、ロンドン・ナショナル・ギャラリーにあるほかの2点の「ハープシコードを弾く女」と比較しても酷似していることを、リビー・シェルドンは認めている。結局、技術的観点からすると、「フェルメールによって描かれたという強力な証拠がこの作品にはある」・・・ということみたいだ。
サザビーズの古典作品部門グレゴリー・ルービンシュタインはこう語る・・・ 「ロリン男爵所蔵のこの作品は、50年間も姿を消していたうえ、複製画のいいやつぐらいにしか考えられていませんでした。メトロポリタン美術館に展示されれば、研究者たちもきっと作品のすばらしさに驚くでしょう。」
© The Art Newspaper
(2001.03.20. 訳)
おっきな画像「A Young Woman Seated at the Virginals」 by Sotheby's
http://search.sothebys.com/liveauctions/sne..
「ハープシコードを弾く女」の真贋について(英語)
http://essentialvermeer.20m.com/rolin/rolinone.htm
(Essential Vermeer)