展評訳: Exibart / Silvia Bonacini 05.12.2001.
ルイジ・ケルビーニ音楽院が所蔵する古典楽器、音楽をテーマにした絵画作品、科学的に音楽を作り出す機械などなど・・・音楽の歴史、そして音楽へのおもいをこめた展示がフィレンツェで催されている。
「音楽」をテーマにアカデミーが展示を催すのにはいわれがある。音楽は、1800年代ぐらいまでアカデミーで絵画と同様に習得が義務づけられ、比較的裕福な人々にとって欠かすことのできない教養のひとつだった。
さて、フィレンツェの音楽の歴史はメディチ家とともにはじまる。メディチ家の蒐集熱は音楽にもおよんでいる。1598年には『バルディ室内楽団』を創設し、これはイタリア楽劇の発展のもとにもなった。また、大理石の弦楽器サルテリオを作らせたコジモ2世のように、メディチ家は特別高価な素材で鑑賞用の楽器を作らせたりしている。
フェルディナンド2世(1610-70)も情熱的な音楽愛好家で、アントニオ・ストラディヴァリ(1648-1737)にたびたび楽器制作を依頼。今回の展示にも、アントニオ・ストラディヴァリに作らせたヴィオラが一点展示されている。また、フェルディナンド2世とバルトロメオ・クリストフォリ(1653-1731:パドヴァ)の出会いは、やがて現在のピアノの直接の祖先にあたるクリストフォリのピアノの発明(1698)にもつながっている。
フェルディナンド2世の音楽にたいする情熱は、ドメニコ・ガッビアーノの『音楽家たち』やクリストフォロ・ムナーリの『楽器』などの絵画作品からもうかがうことができるだろう。この展示会では、これらの絵画作品に描かれている楽器をじっさいに目にしながら、1600〜1700年代にはどのような楽器が流布していたのか、そしてそれらの楽器をいったいどのように使っていたのかなどが理解できるようになっている。
メディチ家が1737年に断絶すると、フィレンツェはオーストリア・ロレーヌ家の支配下にはいった。ピエトロ・レオパルド(1747-92)の治世が輝いた時代・・・・・
音楽を取り巻く環境は一新され、楽器の種類も増えるいっぽうで、たとえばオーボエに似た響きの『セルペントーネ(大蛇)』といわれる中世の楽器がリバイバルしたりして、カスタネットやタンバリンとおなじようにオーケストラに組み入れられた。この時代に関する展示では、なんといっても『1770年フィレンツェでのモーツァルト』が目を惹く。
最後のコーナーは、科学的な方法によって音を生み出す機械的楽器の展示。音の振動数を計りながら数学的に作曲する機械、人間の耳を模した機械など・・・あまりメジャーにはならなかったが、「音楽は音をめぐる科学」だという考え方に基づいて、1700年ごろより1800年代にいたるまで、けっこういろいろと試されたみたいだ。
マルチメディアを駆使していてひじょうに分かりやすい展示会だったのと、頭と目だけで音楽の歴史を理解するのと違い、展示されている楽器の音をじっさいに聴くことができるのはひじょうにおもしろくもあったし、理解の助けになった。
(2001.12.09. 訳)
※ 展示会は、フィレンツェのアカデミー美術館(Galleria dell'Accademia, Firenze)〜2002年1月6日
■ ストラディヴァリウス
Storia del Pianoforte
http://web.tiscali.it/sicilpiano/storia_del_pi..
1700年から今日にいたるピアノの画像が愉しい。(イタ語)