マーシャは、モスクワでの大学院時代に知り合ったイギリス人と結婚し、それからほどなくロンドンに移り住んですでに4年。毎年3度は、仕事に折り合いをつけてロシアに来ます。
「イギリスで暮らしていて、それでもロシアのここはすばらしい、そんなふうにおもえるとこはある?」こんな質問をマーシャにすると、まっさきに飛び出してきたのは『ヒト』でした。
顔だけほぐして笑うイギリス人にくらべると、多少ずっこけてはいても血は濃いロシア人に接して、たぶんほっとするのでしょう。異国の、しかも現代社会に生きる人たちの冷たさにマーシャが慣れていないということを差し引いても(ロシアはそういう意味ではまだまだイナカ)、まあ分からないでもない。
つぎにマーシャがズラズラズラとあげたのが『食べ物』でした。野菜、フルーツ、キフィール(液体ヨーグルトみたいなの)、黒パン・・・ロシアのほうが食べ物がおいしいって??!!これはオドロキ。
そもそもロシアは流通システムがまだぜんぜんなってませんし、衛生管理だって食品管理だって、消費者の側からすればナイみたいなもん。どっかから持ってきた野菜を、どっかで売ってる・・『得体が知れない』という疑念はいつもぬぐうことができません。
ヴォルガ川の水を汲んで塩とガスを入れたミネラルウォーター、製造年月日のチケットをすげ替えたジュース、じっさいの生産量よりはるかに多く流通しているグルジア産ワイン、小麦粉入りソーセージ・・
「それでもロシアのほうがおいしい。」とマーシャが言ったのは、『流通システムができあがっていて、大量生産が可能な国の野菜や食品には、まるで味がない。』ということでした。ああそういうことね。これはイギリスだけじゃなくて、日本にもアメリカにも共通して言えますね。
あとは・・・おなじ寒さでもロシアの乾燥した寒さのほうがはるかに過ごしやすいとか、地下鉄はモスクワのほうがダンゼンいいとか、イギリスよりロシアのほうが時刻表通りに電車がうごいているとか(!)、グローバルに対処してくれるロシアの医療システムの良さとか・・・
「じゃ、イギリスのこれがいいってのは?」「歴史博物館みたいなとこで、じっさいに展示品に触らせてくれるのがスゴイ!」「ビールもおいしいなぁ・・地方のちっちゃなパブで出てくる料理とかも・・」
あっ・・そう言えば『ロシアの悪いとこ』ってのを聞き忘れた。でもこれはヤボな質問だったとおもいます。英国とロシアを比較的自由に行き来しているとして、『悪いところを嘆く』より、『それぞれのいいところをおもいっきり愉しもう』とかんがえるのが、フツウでしょ?
(2003.07.29.)