EKAKINOKI

絵画作品のデジタル復元

作品の成分をサンプリングして化学分析し、コンピュータによるデジタル復元をしたというおはなし。デジタル復元された作品は、オランダ人画家ヘンドリック・テル・ブリュッヘン(1588-1629)のもの。

http://www.natureasia.com/japan/webspecial/st_luke/index.php

記事から引用:

この方法は非常に興味深い。なぜなら、デジタル技術が初めて定量的に利用されたからである。しかし、問題がひとつある。色の強さがコバルトやヒ素の濃度に比例しているという仮定は、必ずしも正しいとはいえない。(ロンドン・ナショナル・ギャラリー科学部 David Saunders 氏)

(引用おわり)

『色の強さ』が数量的『濃度』に正確に比例していないというのは、その通り。でなければ・・数量的な『濃度』からふたたび作品を作ることができるってことになってしまう。将来的にはそんなことも可能なのかもしれないけれど、やはりムリがある。化学的な定量分析に完璧には比例してない『なにか』があるから『アート』だもんね。

ふたたび引用:

Dik(デジタル復元したひと)は、こうした意見に同意しながらも、この単純化はやむを得ないと説明しています。なぜなら・・放射線は絵具層全体から発せられるが、絵画上において肉眼で見える色は主に上層部の絵具による・・としているからです。Ernst van de Wetering 氏(アムステルダム大学美術史家)は、Dikの推定によるマントの色が『派手すぎる』と感じていますが、これもそうした復元手法のためと考えられます。

(引用おわり)

「絵画上において肉眼で見える色は主に上層部の絵具によるものである」・・これ、『音楽のCD』に似てるネ。

CDの音はきれいだけれど、ひとつの『音』にかかわっているさまざまな刺激を、たとえば聴こえない音でも感じている音とか、レコードほどひろってくるわけではない。CDは、かぎられた範囲に分布する音を、より完璧にひろってくる。

つまりすべてをフォローするのではなくて、目的を絞り、その目的を決定する情報のうち必要不可欠なものに焦点をあてる・・科学的な手法ですね。

『作品の復元』と考えるよりも・・作品にはじっさいに手を加えないで、作品をいろいろに復元できるわけだから、そしてそういうことはいままでできなかったわけだから、そういうイミで、ひじょうに有益にはちがいない。

元々の作品なんて、タイムスリップでもしないかぎり、どうあがいたってできっこないとおもうし・・いままでより、またひとつ選択肢がふえた、そういうふうに考えればいいんじゃない?

もちろん、ささいなことで熱い恋もさめるってこともあるし、かつて教会の椅子に腰掛けた人々が祭壇に目をやって『崇高なおもい』にかられたとか・・そういう作品の本質的な部分、創作性の部分、コレはまた別モンダイでしょう〜。

アムステルダム大学美術史家が言った、「派手な色に感じた」という意見はどうかなぁ?

修復がなされてあざやかな色彩をとり戻したあとのフレスコ画を見ていると、何百年前、じっさいに作品が描かれたときはホントにこんな色をしていたんだろうか・・よくそんなことを考えさせられます。

とどうじに、派手な色であれ地味な色であれ、すぐれたアーティストはひとつの作品をみごとにまとめている。これこれ、これこそが芸術性でしょ?派手な色とか地味な色とかってこと以上に。

だからもし、ほんとうの修復、でき得るかぎりの修復というものがあるとしたら・・ある特定のアーティストの芸術性を総合的に理解し、多少色かげんなどが違ったとしても、アーティストの個性を最大限に引き出す、その芸術性を可視なものにする、ってことなんじゃ〜?

(2002.08.21.)(2003.03.23. 点検)(2003.11.03. 見直し)

かんれんサイト

ダブリン国立美術館でヘンドリック・テル・ブリュッヘン(Hendrick ter Brugghen 1588-1629)の作品を見たひとのレポート。

http://pure.cool-rock.com/caravag/report8b.htm

修復かんれんファイル

□ 絵画作品のデジタル復元
■ 青色という問題児
■ 修復は器物損壊?
■ ルネサンス時代のタペストリー、どうやって修復?
■ ピエーロ・デッラ・フランチェスカ修復
■ フェルメール作品鑑定

BBSより

あざらしくん:

「聖ルカの新しいコート」という記事を読むと色の復元ってなんかすごい大掛かりだねー。なにもそこまでやらんでも、、、とか思ってしまいます。

>「絵画上において肉眼で見える色は主に上層部の絵具によるものである」

油絵ではなくて、フレスコなどだと再現性が良いかも、、、フレスコに「スマルト」が使われている例があるかはわからないけど。

「すべての筆跡が正確に」分かるとDikは語っている。っていうのは下層から上層まですべてが出てしまうってことなわけですね。いずれにせよ、客観的な数値が全画面で得られるのは、便利かも(原子炉がいるけど)。

>現在考慮されているよりももうすこし派手だったんじゃないか

ヨーロッパとアメリカの修復の後の色合いが結構違うような気がすることがありますね。

梁井朗さん

上層の絵の具!?絵画修復とコンピュータのファイル、読みました。人間が見るのはもっぱら絵の具の上の層−というくだりにはびっくりしました。何度も絵の具を重ねては削り、ということをやっているたくさんのえかきさんが聞いたら、おこるだろうなあ。油絵ってそんな単純なもんじゃないでしょう!

えかきのき

ひとつの作品の『ある一面』・・それもかなりインパクトがある一面からスポットをあてて、コンピューター上で復元する・・ということですよね。もちろんそれがその作品の『すべて』であるわけはないけれど・・・いろいろ実験ができて、『ほんとうはどんな絵だったの・・?』というのがより分かる手助けにはなるよね。

梁井朗さん

たしかに修復ってむつかしい問題ですよね。ただ、何層も色を塗り重ねた油絵と、ただひとつの層だけからなる油絵とでは、質感がぜんぜんちがうのもこれまた事実でありまして。

えかきのき

あくまで『科学的単純化』で『近似的再現』ですよね。(この『単純化』『近似的再現』については『デジタル復元』をやった人みずからが『ある程度やむおえない』と言っています。)で、『近似的再現』と言うのであれば、過去の修復もそう。

また最近は、『完璧に元の姿に戻す修復』から『修復した部分がはっきりと分かる・いつでもとれる』タイプの『パッチワーク的修復』になっていますから、「ほんとうはどうだったんだろう・・」というフラストレーションの部分がコンピューター上で発散できる?!

絵画 ロシア イタリア